一人では限界を感じることも、志を共にする「同志」がいれば、世界を変える力になります。
易経の十三番目にあたる**「天火同人(てんかどうじん)」は、暗く閉ざされた「否」の時代を打ち破り、開かれた場所で人々が手を取り合う姿を象徴しています。火が燃え上がり天を照らすように、情熱と理念が一致する時期です。この記事では、卦辞の漢字を漢和辞典の語義序列から深掘りし、「十翼(じゅうよく)」**が教える「最強のチームを作るための絶対条件」を解説します。
徹底解読:卦辞「同人于野。亨。利渉大川。利君子貞」
漢和辞典の語義序列を精査し、「同人」を成功させるための「場所」の重要性を読み解きます。
- 【同】(ドウ・おなじ・ともに)
- おなじ: ひとつ、等しい。
- ともに: 一緒にする、合同する。
- あつまる: 一つ所に集まる。
- 根拠: ここでは**2の「ともに(志を共にする)」**を採択します。単に同じ形であることではなく、目的を一つにして動く動的な連帯を指すからです。
- 【人】(ジン・ひと)
- 根拠: ここでは自分以外の「他者、仲間」を指します。
- 【于】(ウ・ゆく・〜において)
- ゆく: 目的地へ向かう。
- 〜において: 場所や対象を示す助字。
- 根拠: **2の「〜において」**を採択します。
- 【野】(ヤ・の・ひろい)
- の: 田畑の広がる平地、郊外。
- ひろい: 範囲が広い。
- ありのまま: 飾らない、野生。
- 根拠: 1の「郊外」という意味から発展した**「公(おおやけ)の、開かれた場所」**という意味を採択します。身内だけの狭い空間ではなく、誰からも見える場所で志を立てることの重要性を示しています。
- 【亨】(コウ・とおる)
- 根拠: 志を同じくすれば、物事はスムーズに進みます。
- 【利】(リ・よろしい)
- 【渉大川】(ショウタイセン・だいせんをわたる)
- 根拠: 仲間がいれば、大きな困難(大川)も乗り越えられることを示します。
【総合解釈】
志を同じくする仲間と、開かれた公の場所で集う(同人于野)なら、物事は大いにスムーズに進む(亨)。仲間との団結があれば、重大な決断や困難に挑むことも可能であり(利渉大川)、君子として正しい道を守り続けることが利益となる。
十翼が説く「類をもって集まる」の道理
十翼の**『彖伝(たんでん)』**は、この卦を「文明(火)にして、もって剛(天)に応ず」と解説します。
下の者が文明(知恵や情熱)を持ち、上の剛健な意志に応える。この「知性と実行力」の合致が、強力な推進力を生みます。また、「ただ君子のみ、よく天下の志を通ずるをなす」とし、私利私欲ではなく「天下のため」という公の志だけが、本当の意味で人々を一つにできると説いています。
また、**『序卦伝(じょけでん)』**では「物、もって否(ふさが)るに終わるべからず。ゆえにこれを受くるに同人をもってす」とあります。閉塞(否)が極まれば、必ずそれを打破するために人が集まるという、希望の連鎖を示しています。
チームの純度を高める6段階:内輪揉めへの警告
天火同人における「仲間との距離感」を、爻辞(こうじ)と十翼の**『象伝(しょうでん)』**から見ていきましょう。
| 段階 | 易経の言葉(爻辞) | 十翼(象伝)による指針 | 現代的解釈 |
| 第一 | 門を出でて人に同ず | 「誰か咎あらん」:家の門を出て、広く人と接する。 | 公開: 隠し事なく、オープンな交流を始める。吉。 |
| 第二 | 宗に同ず | 「吝(りん)の道なり」:同族や身内だけで集まる。 | 派閥: 身内びいきや「村社会」化。視野が狭まり恥をかく。 |
| 第三 | 戎(じゅう)を莽(くさむら)に伏す | 「敵、剛なればなり」:武器を隠し、隙を伺う。 | 不信: 仲間を疑い、裏切りを恐れて疑心暗鬼に陥る。 |
| 第四 | その墉(かき)に昇る。攻むるに克たず | 「義、勝たざればなり」:壁に登って攻めようとするが断念。 | 自制: 争いそうになるが、理性が勝ち、思い止まる。 |
| 第五 | 同人、先には号(さけ)びて咷(な)き、後には笑う | 「中正をもって相(あい)助くるなり」:困難の末に結ばれる。 | 合致: 紆余曲折を経て、ようやく真の同志と巡り会う。 |
| 第六 | 郊(こう)に同ず | 「志、未だ得ざるなり」:遠く離れた場所で協力する。 | 淡白: 親密さは欠けるが、争いもなく協力関係を保つ。 |
十翼が説く「類を分かち族を弁ず」の教え
天火同人の**『象伝(しょうでん)』**には、コミュニティ運営において最も重要な「交通整理」の知恵が記されています。
天と火とは同人なり。君子もって類(るい)を分かち族(ぞく)を弁(わきま)う。
天の下で火が明るく照らしているのが同人の形です。
君子(リーダー)はこれを見て、「類を分かち族を弁ず」、つまり「物事の性質を見極めて分類し、それぞれの役割や立場を明確にする」べきだと説いています。
ただ「仲良くしよう」と曖昧に集まるのではなく、**「私たちは何のために集まり、誰が何を担うのか」**を明確に分かつこと。この「区別」があって初めて、組織は混乱なく一つの目的に向かうことができるのです。
天火同人の教えを今すぐ活かすべき人
- 新しくビジネスパートナーを探している、あるいはチームを作っている方
- 組織内の派閥争いや、身内意識の強さに危機感を感じている方
- 孤独を抜け出し、高い志を共有できるコミュニティに出会いたい方
天火同人は、真の連帯は「馴れ合い」ではなく、開かれた場所での「公明正大さ」から生まれることを教えてくれます。
もしあなたが今、仲間のことで悩んでいるなら、それは**「宗に同ず」**の状態、つまり特定の誰かや古い慣習に執着しすぎているからかもしれません。一度、外の「野」に出て、多くの人の目に触れる場所で自分の志を語ってみてください。最初は理解されず泣くこともある(五爻)かもしれませんが、その先には必ず、共に笑い、共に「大川」を渡れる最高の同志が待っています。
十翼の**『彖伝』**はこう締めくくっています。
「文明にして健。中正にして応ず」
知性を磨き、健やかに歩み、偏らない心(中正)を持つ。そのあなたの輝き(火)が、天を照らし、同じ光を持つ人々を磁石のように引き寄せるのです。
次回の予告:
次は、太陽が天高く昇り、すべてが豊かに満ち溢れる**「火天大有(かてんたいゆう)」**について解説します。富と権力を手にしたとき、いかにしてそれを守り、活かすべきか、その「帝王学」を学びましょう。
それでは。


