【第15章解体】ESG投資の「真実」――シーゲルは何を信じ、何を疑い、何を棄てたのか?

デスクの上に置かれた防災ヘルメットと『SURVIVAL INVESTING』というタイトルの分厚い投資本。背景には株価チャートが表示されたモニターがあり、震災後の生活を守る「資産防災」のイメージを表現している。 資産防災

【免責事項】本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品・投資行動を推奨するものではありません。投資にはリスクが伴い、元本割れの可能性があります。投資判断はご自身の責任において行ってください。

ジェレミー・シーゲル著『株式投資(Stocks for the Long Run)』第6版 第15章のテーマは「ESG投資」だ。1970年にミルトン・フリードマンが「企業の唯一の社会的責任は利益を増やすこと」と宣言してから50年、企業と投資家を取り巻く環境は大きく変わった。ESG投資は急拡大し、将来リターンをめぐる議論は今も決着がついていない。本稿では原文に忠実に整理したうえで、これまでの評価軸に沿って検証する。


【抽出】第6版 第15章の核心的ロジック

A. フリードマン・ドクトリンの誕生と動揺

著者はまず、ESG投資の思想的背景を整理するためにフリードマン・ドクトリンの変遷をたどる。

1970年9月13日、ミルトン・フリードマン教授はニューヨーク・タイムズ別冊マガジンに論文を寄稿した。経営者らに「社会的責任」を求める声が高まるなか、フリードマンは「自由主義と私有財産制度において、経営者は企業所有者(オーナー)の従業員であり、法律と倫理的慣習の双方に基づく社会の基本ルールを満たしながら利益を最大化するという願いに従って事業を行う責任がある」と主張した。この「フリードマン・ドクトリン」は歴代の企業経営者の命題となり、ニューヨーク・タイムズは「資本主義の進路を変えた」と論じた。

しかしフリードマン・ドクトリンが50周年を迎える頃には、状況は変わっていた。2019年、米国の主要企業経営者らの有力組織であるビジネス・ラウンドテーブルが新しい企業の目的に関する声明を発表した。企業は株主だけでなくすべてのステークホルダーに対して基本的なコミットメントをすべきであり、従業員への公平な報酬・多様性の育成・持続可能な生産方法による環境保護などを目標に含めると宣言した。

2020年、ニューヨーク・タイムズはフリードマンの論文掲載から50年目の日に8ページにわたる特集を組み、20人以上の著名人に意見を求めた。そのほとんどがフリードマンの原論文を批判した。セールスフォースCEOのマーク・ベニオフは「フリードマンが歴代のCEOを洗脳したといえるかもしれない」と述べ、フリードマン・ドクトリンが過度の「短期主義」や従業員・環境保護の衰退を助長したと主張する人も多かった。

著者はここで重要な問いを立てる。フリードマンが「利益の最大化」ではなく「株主利益の最大化」と述べていたとしたらどうか。1970年当時この2つは同義とみなされていたが、現代の研究ではそうではない可能性が示唆されているという。

B. ESG投資の定義と規模

ESGとは環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3カテゴリーの頭文字をとった呼称だ。

  • 環境:排ガス規制・再生可能エネルギー・節水・リサイクル・公害防止など地球環境への配慮
  • 社会:人権・従業員の健康・安全と福祉・児童労働・贈収賄防止法・フェアトレード方針・多様性・地域開発・機会均等などのステークホルダーの厚生
  • ガバナンス:企業慣行・役員報酬・議決権行使・透明性・独立取締役など

著者によれば、米国社会的責任投資フォーラム(SIF)財団の調査で、ESG要素を考慮する機関投資家の投資額は2020年に17兆ドルに達し、2018年から42%増加した。この戦略にコミットする資金は2012年から2020年にかけて7倍に増え、増加傾向はさらに加速している。MSCIを筆頭にFTSEラッセルやサステイナリティクスなど多くの機関がESGに関する数百の基準と項目で企業を評価しており、そのESG格付けの重要性はスタンダード・アンド・プアーズやムーディーズによる従来の格付けに匹敵するものとなっている。

C. ESG方針は企業収益を高めるか

著者はESG方針が企業収益を高める可能性として複数の経路を挙げる。労働条件の改善はやる気と生産性を向上させ、多様性の促進はより良い人材を呼び込み、取締役会に広い視野をもたらす。独立した取締役会や報酬委員会の設置など優れた企業慣行は収益を直接増加させる可能性がある。

また顧客がESGを実践している企業の商品を高値でも喜んで購入する場合には収益が高まる。電気自動車への需要を例として著者は「標準的な内燃エンジン搭載車を購入したほうがコスト効率は良いにもかかわらず電気自動車を求める購入者が多い」と述べている。さらにESG目標、特にガバナンスのベストプラクティスを追求することで投資家のバリュエーションが改善し、厳しい監査基準や意思決定プロセスの透明性を高めた企業は高いPERを達成できるかもしれないとも述べている。

D. バリュエーション改善とESGの実証データ

著者はESG目標の追求コストが直接の金銭的利益を上回る場合には経営陣がESG目標達成をやめさせようとする企業も多く存在すると認めつつ、株価が上昇するメカニズムとして2つを示している。第1は、ESG銘柄を保有することで「心理的な喜び」を感じる投資家の選好による株価上昇だ。第2は、環境に配慮する企業が提供する気候変動リスクに対するヘッジ機能だ。

実証データとして著者はいくつかの数値を示している。バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチがS&P500全企業を分析した結果、炭素排出量が同一セクター内の中央値未満の企業は簿価の5.1倍で売られ、中央値以上の企業では4.2倍だった。S&P500の3大炭素排出セクター(公益事業・エネルギー・製造業)について、経営陣が排出量目標を設定している企業の予想PERは設定していない企業より50%高い。

著者はまた、ESG投資に対する「心理的需要」についてドイツの事例を紹介している。ドイツ政府はESGプロジェクトに資金提供する債券と提供しない債券の2種類を発行したが、どちらも同じ条件で発行されているにもかかわらずESG債は非ESG債よりも高値で売られ、結果的に利回りは低くなっていた。

E. ESG銘柄の将来リターンの構造

著者はESG銘柄の将来リターンが3つの要素で構成されると整理している。第1はESG投資に対する将来需要の予想外の変化、第2はESG企業の将来収益性の予想外の変化、第3はバリュエーションにプレミアムが付くことによって長期的リターンが予想より低くなることだ。

第3の要素は投資家にとって「逆風」となる。ESG銘柄が純粋にリスク・リターン基準で非ESG銘柄を上回るためには、その収益やESG投資の人気が予想よりも速く高まる必要がある。現在のESG銘柄へのプレミアムにはすでにESG投資の将来の期待成長が含まれているため、ESG投資の人気が高まるという予測だけでは、これらの銘柄が市場をアウトパフォームすると結論付けるには不十分だ。

F. ESGとポートフォリオ選択の原則

著者は投資家の属性に応じた最適なESGポートフォリオの選択を整理している。

ESG投資の成長性や収益性について市場と同じ期待を持ち、かつESG銘柄保有から心理的便益を得られない投資家はESG銘柄をアンダーウエイトすべきだ。ESG銘柄保有の心理的便益が一般投資家と一致する投資家は時価総額加重平均の標準的なインデックスファンドの保有が最適となる。ESG銘柄を一般投資家よりも重視している投資家はオーバーウエイトすべきで、リスク・リターンのトレードオフはさらに悪化するが心理的便益を含めた総合的な満足度は高まる。

著者は標準的な時価総額加重平均インデックスファンドを保有する投資家は金銭的リターンで見ると最良のリスク・リターンのトレードオフを得ていないことに留意すべきだと述べている。ESGに対する選好がどうであれ、ESG銘柄をアンダーウエイトすれば金銭的なトレードオフは改善できる。しかし平均的なESG選好を持つ投資家の心理的便益を考慮に入れれば、マーケット中立の時価総額加重平均インデックス・ポートフォリオが最適だとしている。

G. 過去のデータと「罪つくり銘柄」の優位性

著者は近年ESG基準で上位の銘柄がほとんどの尺度で一般的な平均株価指数を上回っていることを認めている。ロックフェラー・アセット・マネジメントのケイシー・クラークとハルシャド・ラリットの研究によると、図15-1が示す通り過去10年間でESGランキングを上昇させた企業は年率21.9%のリターンを上げ、ESG下落銘柄の16.5%および広範な市場の18.0%を上回った。

しかし著者は長期的な注意点として「罪つくり銘柄」の歴史的なアウトパフォーマンスを指摘している。第6章で述べた通り米国で長期的に最も優れた銘柄はフィリップモリスであり、これはどのESGリストでも上位にはならない。ディムソン・マーシュ・スタントンは1900年から現在まで米国においてタバコ産業が他のすべての産業と市場を大きくアウトパフォームしていることを示した。英国ではアルコール飲料製造企業が他のすべてのセクターを上回っている。著者は「短期的には優良銘柄が勝つかもしれないが、歴史的には罪つくりな銘柄が1位を占めてきた」と述べている。

H. 気候変動リスクヘッジとしてのESG

著者はESG銘柄を保有する動機として「心理的喜び」以外に「気候変動リスクヘッジ」という観点も示している。標準的なファイナンス理論では投資家が最高のリターンを達成するポートフォリオを選択することが望ましいとされるが、気候変動が投資家の懸念事項になるなら、環境悪化が予想以上に急速に進んだ場合により大きな利益を得られるグリーン企業の株式を保有すべきケースもある。

グリーン銘柄の保有が気候変動の悪影響に対する保険として機能するとすれば、ヘッジ資産として他のリスクを相殺するため価格が高く(リターンが低く)なる。グリーン銘柄をポートフォリオで自動的にオーバーウエイトすべきというわけではなく、投資家にとって環境の状態が一般投資家よりも重要である場合、あるいは気候変動リスクが市場の認識よりも大きいと考える場合にのみオーバーウエイトされるべきだと著者は述べている。

I. フリードマン・ドクトリンの再解釈と結論

著者はフリードマンの論文を注意深く読むと、経営者が株主である企業所有者の従業員であることを強調し「株主の願いに従って」事業を行うべきだと主張していると指摘している。もし株主価値の最大化を経営者の使命とするのであれば、フリードマンが賞賛した自由市場の資本主義経済においてもESG目標の追求は完全に正当化されると著者は述べている。

著者の最終的な結論は投資家の属性によって異なる。ESG投資が現在の予想よりもはるかに広まると考える投資家にとってはオーバーウエイトが正当化される。ESG銘柄の保有から心理的な価値を得られず環境リスクも大きくないと考える投資家にとっては、ESG銘柄の人気が予想以上に高まりその後の価格上昇でバリュエーションを克服できると信じる場合にのみマーケット中立の保有が正当化され、そうでなければアンダーウエイトすべきだ。ESG投資の将来的な成長がすでに市場に織り込まれていると考える投資家のポジションはその人の選好(心理的喜びと気候リスクヘッジの願望)によって決まるとしている。


【検証】第4版(2005年)から第6版(2025年)への差分分析

第4版が書かれた2005年当時、ESGという言葉自体がまだ一般的ではなく(ESGという語は2006年の国連原則で普及した)、社会的責任投資(SRI)として限定的に論じられるにとどまっていた。

【4版(2005年)の状況】
ESGはまだ「社会的責任投資(SRI)」として主流とはいえない存在だった。
フリードマン・ドクトリンへの挑戦という形での本格的な議論はなかった。
  ↓
【6版(2025年ベース)での現実】
2012〜2020年でESG運用資産が7倍に膨張し17兆ドルに達した。
2019年のビジネス・ラウンドテーブル声明でステークホルダー資本主義が主流に。
ESG銘柄が近年市場をアウトパフォームした一方、理論的には長期的な逆風も指摘される。
  ↓
【シーゲルの対応】
「ESG銘柄の過去の好パフォーマンスは将来の保証ではない。
 投資家の属性(心理的需要・気候リスク観)によって最適なESGポジションは異なる。
 フリードマン・ドクトリンとESGの追求は実は矛盾しない」
評価軸具体的象徴分析
【改善・的中】「心理的需要とバリュエーションプレミアムの分離」という分析枠組みESG銘柄の過去の好パフォーマンスを「心理的需要による株価押し上げ」と「実際の収益改善」に分解する分析は、ESG投資の本質を捉えた鋭い洞察だ。単純な「ESG=良いリターン」という主張を理論的に解体した点は第6版の大きな進歩だ。
【修正・誤認】「罪つくり銘柄」の長期優位性という反証の扱いフィリップモリスやタバコ・アルコール産業の長期アウトパフォーマンスというESG投資にとって都合の悪い長期データを、著者は第6章・第11章の内容として明示的に示している。第4版ではこの反証は相対的に弱く扱われていたが、第6版ではより正直に提示されている。

【峻別】経済的必然 vs 時代的偶然

経済的必然(2050年でも再現可能性が相対的に高いもの)

  • ガバナンス改善による収益の直接向上: 独立取締役・報酬委員会・透明性の向上といったガバナンスのベストプラクティスは、経営の効率化と利益増加に直結する因果関係を持つ。これはESGという枠組みとは独立した経済的必然だ。
  • 心理的需要がバリュエーションプレミアムを生む構造: 投資家の価値観が株価に反映されるという構造は、美術品・宝飾品など「効用が消費で得られる財」と同様のメカニズムであり、投資家が感情を持つ限り継続する。ただしそれは「高いバリュエーション=低い将来リターン」という逆風とセットだ。
  • ヘッジ資産には低リターンが対価として求められるという原則: 気候変動リスクをヘッジするグリーン資産に低リターンが求められるという関係は、リスクプレミアムの経済学的原則から導かれる必然だ。

時代的偶然(特定の条件が重なった可能性があるもの)

  • 2012〜2021年のESG銘柄の急激なアウトパフォーマンス: ESG投資への資金流入という「需要サイドの急増」がバリュエーションを押し上げた。これは「ESGブームという時代的偶然」であり、需要の拡大が一巡した後は逆風となる。著者自身が「現在のESG銘柄へのプレミアムにはすでにESG投資の将来の期待成長が含まれている」と述べている通りだ。
  • 化石燃料産業への「規制リスク」と「脱炭素マネーの偏在」: ESGスコアが低い石油・エネルギー産業への資金引き揚げは、2010年代後半の政治的・文化的ブームに依存した現象だ。著者注記にある通り「規制リスクは通常の市場リスクに包含されるものであり、ヘッジのポートフォリオを組む必要はない」という整理も重要だ。

【批判】2050年への死角

① 「罪つくり銘柄の長期優位性」という反証への向き合い方

著者は米国でフィリップモリス、英国でアルコール飲料製造企業が1900年以来最高のリターンを上げ続けてきたという長期データを示している。この事実はESG投資の長期的な金銭的優位性に対する最も強力な反証だ。著者はこの反証を「短期的には優良銘柄が勝つかもしれないが、歴史的には罪つくりな銘柄が1位を占めてきた」と認めているが、この事実から投資家が実践的にどう結論を引き出すべきかについての議論は本章では深められていない。第6章・第11章との整合性を踏まえると、「金銭的リターンだけを追うなら罪つくり銘柄は無視できない」という命題は2050年でも有効だ。

② バリュエーションプレミアムの「逆風」はすでに折り込まれているのか

著者は「現在のESG銘柄へのプレミアムにはすでにESG投資の将来の期待成長が含まれている」と述べる。しかし2020年代後半以降のESGブームの退潮(欧米でのESGへの政治的反発・いわゆる「グリーンウォッシング」批判・欧州でのESGファンドの格下げ)は、その期待成長が実現しないシナリオを示している。予想を下回るESGの普及が起きれば、ESG銘柄への「期待外れ」として大幅なアンダーパフォーマンスが発生する可能性がある。

③ ESG格付けの主観性と「格付け間の乖離」問題

著者はMSCI・FTSEラッセル・サステイナリティクスなど複数のESG格付け機関を紹介しているが、異なる機関のESG格付けの間には相関がほとんどない(格付け間の乖離が大きい)という実証研究が複数存在する。従来の信用格付けのような客観的基準が確立されていないESG格付けに基づいて投資判断を行うことの難しさは、本章では十分に論じられていない。


【評価】第15章の評価軸

評価論点判断の根拠
【信】Core Theory「ESG銘柄の過去の好パフォーマンスは将来の保証ではなく、バリュエーションプレミアムが逆風になる」という理論的整理心理的需要によるプレミアムが将来リターンの低下をもたらすという経済学的論理は正確だ。ESG投資ブームの一巡による逆風シナリオは2050年に向けて十分に起こりうる。
【疑】Variable気候変動リスクのヘッジとしてのESG銘柄の位置づけ気候変動リスクが市場の認識を超えて深刻化するかどうかは不確実だ。規制リスクは通常の市場リスクに包含されるという著者の整理は正確だが、実際の気候変動の深刻さと速度によって結論は大きく変わる。
【棄】Bias「近年ESG銘柄が市場をアウトパフォームしたこと」を将来のESG優位性の根拠とする主張著者自身が「過去のパフォーマンスは将来の保証ではない」と明示しており、2012〜2021年のアウトパフォーマンスはESGブームという需要サイドの急増という時代的偶然に大きく依存していた。これを将来の根拠とすることは著者自身の理論と矛盾する。

まとめ

本に記述された事実と変遷

第15章の核心は「ESG投資は心理的需要・気候リスクヘッジ・実際の収益改善という3つの経路で株価を押し上げる可能性があるが、バリュエーションプレミアムという逆風も同時に存在する。どのポジションをとるべきかは投資家の価値観と信念によって異なる」という複層的な結論だ。

主な事実を確認すると、ESG要素を考慮する機関投資家の投資額は2020年に17兆ドルで2018年比42%増、2012〜2020年で7倍に増加した。炭素排出量が中央値未満の企業のPBRは5.1倍で中央値以上の4.2倍を上回った。排出量目標を設定した企業の予想PERは設定しない企業より50%高い。ドイツでESG債は非ESG債より高値(低利回り)で取引された。ESGランキング上昇銘柄の年率リターンは21.9%で下落銘柄16.5%・広範な市場18.0%を上回った。一方、ディムソン・マーシュ・スタントンの研究では米国においてタバコ産業が1900年から現在まで他のすべての産業と市場を大きくアウトパフォームし、同期間の英国ではアルコール飲料製造企業が他のすべてのセクターを上回っていることが示されている。また米国で長期的に最も優れた個別銘柄はフィリップモリスで、これはどのESGリストでも上位にはならない。

将来への持論と方針

「ESG銘柄の保有から心理的な価値を得られず、環境リスクも大きくないと考えるなら、ESG銘柄をアンダーウエイトすることで金銭的なリスク・リターンのトレードオフは改善できる」という著者の指摘は重要だ。これは「金銭的リターンだけを最大化したい投資家にとっては、現在のESGプレミアムは逆風である」という明確な結論を示している。

一方で「フリードマン・ドクトリンとESGの追求は矛盾しない」という著者の再解釈は示唆に富む。株主価値の最大化を長期的に追求するためにESG目標が有効であるならば、ESGは経営戦略として正当化される。これは「ESGは善か悪か」という道徳論から「ESGは株主価値向上に貢献するか」という経済論への転換だ。

罪つくり銘柄の長期優位性という100年以上の歴史が示す反証と、ESGブームが生んだ近年の好パフォーマンスという表面的な成功の間で、投資家はそれぞれの価値観に基づいて判断するしかない。最終的な結論は全章を読み終えてから出したい。

それでは。

※本記事は刊行時の記述と、著者自身による修正履歴の確認に基づいています。将来の投資環境についての記述は個人の見解であり、予測を保証するものではありません。

【免責事項】本記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。投資は元本割れのリスクを伴います。最終的な投資判断はご自身の責任において行ってください。

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